大判例

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徳島地方裁判所 昭和42年(ワ)347号 判決

原告

片岡健二

ほか一名

被告

徳島県

主文

1  被告は原告片岡健二、同洋子に対し各金八〇七、五二九円および内金七〇七、五二九円につき昭和四〇年一月一八日、内金一〇〇、〇〇〇円につき昭和四六年三月四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告片岡ツルヱに対し金一、四六四、四九三円および内金一、二六四、四九三円につき昭和四〇年一月一八日、内金二〇〇、〇〇〇円につき昭和四六年三月四日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。

2  原告らその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  この判決は原告片岡健二、同洋子において各金二七〇、〇〇〇円、原告片岡ツルヱにおいて、金四九〇、〇〇〇円の各担保を供するときは、第一項に限り仮りに執行することができる。

事実

第一、当事者双方の求めた裁判

一、原告ら

被告は原告健二、同洋子に対し各金一、一四六、〇〇〇円、原告ツルヱに対し金一、八一一、〇〇〇円およびこれに対する昭和四〇年一月一八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言。

二、被告

「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行免脱宣言。

第二、原告らの請求原因

一、原告健二、同洋子の父であり、原告ツルヱの夫である訴外片岡隆幸(大正一〇年六月二日生)は昭和四〇年一月一三日トラツクを運転して、徳島県三好郡西祖谷山村徳善県殖一宇徳善線、国鉄土讃線大歩危駅南方七〇メートル先を南から北に向つて通行中、突如道路が崩壊してトラツクもろとも約三〇メートル下の鉄道線路上に転落し脳挫傷等の傷害を負い、同月一七日同郡山城町久次米病院において、右傷害により死亡するに至つた。

二、右道路は、被告徳島県が管理する公の営造物であるが、本件事故は右道路の崩壊に基づくものであり、右崩壊は右道路の瑕疵によるものである。すなわち、

(一)  本件道路は古い昔に造られた旧式の空石積の石垣を有する道路であつて、荷馬車の通行を主たる対象として構築されたものである。

右空石積の石垣は老朽化し所々に空洞が生じ石積みの位置がくるつたりして危険な状態にあつた。しかも、右道路の路面は軟弱であるため常時窪みができていた。したがつて、右道路を通行する車両が大型化した現在においては僅かな衝撃で崩壊する危険性を有していた。このように道路に窪みが存することや、老朽化した空石積工法による石垣を改修しないで放置したこと自体道路の設置または管理に重大な瑕疵があつたといわなければならない。

(二)  山村の道路といえども、道路管理者は道路を常時良好な状態に保つよう、維持し修繕し、もつて一般交通に支障をおよぼさないようにする義務がある(道路法四二条一項)。道路擁壁の空石積が構築後、長年月を経過しているのであるから今日の貨物自動車交通に堪え得るかどうかを常に調査し瑕疵があれば補修をするか、危険標識をするか、あるいは通行禁止をするなど危険防止の措置をなす義務があるのに、被告徳島県は予算上の理由を口実に右道路の老朽化ならびに交通情勢の変化による道路の瑕疵について何らの調査もなさずかつ改修も施していなかつたこと、また、道路管理責任の認識不足のためか単に道路の外面の状態を係員がパトロールしたり、二・三日毎に道路工手の見廻りがなされていたが、これまた外面的なものに過ぎず、石積の安全度等に関する専門的知識をもつものではなかつた。

三、本件事故により原告らの蒙つた損害とその額は次のとおりである。

(一)  訴外隆幸の得べかりし利益喪失による損害 金四、八九六、〇〇〇円

訴外隆幸は本件事故による死亡当時四三才の健康な男子であり、訴外谷孝運輸有限会社に貨物自動車運転手として勤務し、月額平均約三二、三六六円の給与と年間賞与六二〇〇〇円(一か月平均五、〇一六円)を得ていた。即ち月間平均収入は三七、三八二円であり、本件事故なかりせば尚二九年の平均余命があり、二〇年間は就労可能であつた。年五分の割合で中間利息を控除し現在の価格を計算するとその単利年金現価率は一三・六であり、亡隆幸の生活費は月額七、三〇〇円であつたからこれを前記月間平均収入から控除した同人の月間純収入は三〇、〇〇〇円、年間所得は三六〇、〇〇〇円となる。これをホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除し現在価格を計算するとその単利年金現価率は一三・六であるからこれを右年間所得に乗ずると四、八九六、〇〇〇円となる(給料の昇給を考慮しないで現状維持で計算した)なお被告は訴外隆幸の就労可能年数を争うけれども、自から荷物の積降しをしないで運転を中心にすることができるし、仮に貨物自動車の運転手として限界にきても、一般の自家用運転手として働くことが可能であり、いずれにしても将来の賃金上昇を考慮すると、月額三〇、〇〇〇円の純収入は確実に得られる。

(二)  隆幸の慰謝料 金一、〇〇〇、〇〇〇円

訴外隆幸は若干四三才にして妻子を遺し重傷に苦しみながら死亡したものであり、その苦痛に対する慰謝は少なくとも一、〇〇〇、〇〇〇円を下らない。

(三)  原告らの右賠償請求権の相続

訴外亡隆幸には妻原告ツルヱ、長男原告健二、長女原告洋子のほかに、先妻訴外亡弥生との間に長女妙子、二女美也子、長男登志彦の相続人があり、その法定相続分は原告ツルヱが三分の一、原告健二、同洋子は各一五分の二である。よって亡隆幸の前記(一)(二)の損害額合計金五、八九六、〇〇〇円は右相続分により原告ツルヱが一、九六五、〇〇〇円、原告健二、同洋子は各七八六、〇〇〇円を承継した。

(四)  原告ら固有の慰謝料 合計一、二二〇、〇〇〇円

原告らは最受の夫、父を突然の事故で失い、その生活の支柱をなくした苦しみは筆舌に尽しがたい、その慰謝料は原告ツルヱに対し七〇〇、〇〇〇円、原告健二、同洋子に対し各二六〇、〇〇〇円が相当である。

(五)  弁護士費用 金五〇〇、〇〇〇円

原告らは被告に対し本件事故による前記損害の賠償を求めていたが、被告が応じないため、已むなく本件訴訟の提起を原告訴訟代理人原秀雄弁護士に委任したものであり、同弁護士に対し原告らが負担する報酬債務は本件道路の瑕疵に基づく(これは被告の不法行為による)損害であるから当然その賠償を求めることができる。

しかして、原告らの同弁護士に対する報酬の内原告ツルヱの関係で二〇〇、〇〇〇円、原告健二、同洋子の関係で各一〇〇、〇〇〇円、合計五〇〇、〇〇〇円は被告が負担すべきである。

(六)  原告ツルヱの損害に対する労災保険給付金の充当 一、〇五四、〇〇〇円

原告ツルヱは労災保険金受給者として金一、一一〇、〇〇〇円の給付を受けた。内金五六〇、〇〇〇円は訴外亡隆幸の葬祭費に充当したからこれを除外した一、〇五四、〇〇〇円を原告ツルヱの前記損害額に充当する。

以上合計すると原告らの損害は次のとおりである(一〇〇円未満切捨)。

原告健二、同洋子 各金一、一四六、〇〇〇円

原告ツルヱ 金一、八一一、〇〇〇円

四、よつて、原告らは被告に対し右各損害額および右各金員に対する損害発生(不法行為)の日の翌日である昭和四〇年一月一八日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、請求原因に対する被告県の答弁および主張

一、請求原因一の事実および同二の事実のうち本件道路の管理を被告徳島県がしていることは認めるが、その余の請求原因事実はすべて争う。

二、本件道路の崩壊はその設置又は管理の瑕疵によるものではない。すなわち、

(一)  道路の安全性は個々の道路について個別的具体的に定められるべきであつて、交通頻繁な都会の道路とそうでない山村の道路とを同一に論ずることはできない。

(イ) 本件道路に設置の瑕疵はない。

本件道路は交通の稀れな山村の砂利道であり擁壁は空石積であるが、空石積も石垣構築の一方法であり、それ自体工法上の欠陥はなく現在でも使用されている工法であるから、空石積道路の設置自体に原始的瑕疵があつたものではない。

(ロ) 本件道路に管理の瑕疵もない。

管理の瑕疵とは維持修繕の不完全により道路自体が通常もつ安全性を欠くことをいうものであるが、いかなる状態をさして通常の安全性を欠くというべきか、それは管理者が道路の損傷を知りながら放置しておいた場合なりと考える。

被告徳島県はその下部機関である池田土木事務所において係員が管内道路の維持管理のためパトロールをしており本件事故一週間前の一月七日に第一工務係長の河野和男が本件事故現場附近をパトロールしたが道路に別段異状を認めず、原告主張の窪みもなかつたのであり、また、係長の下に道路工手が一二キロメートルの道路を受持ち二、三日に一回見廻つていたのであるが本件事故前日まで右窪みのあることを知らなかつたのである。かくて、被告県は事故前道路の損傷を知らなかつたものであり、これを知つて放置していたために発生した事故でない。よつて、被告県に道路管理の瑕疵はない。

三、本件道路の事故当時の状況ならびに事故発生経過は概略次のとおりであり、本件道路の崩壊は訴外亡隆幸が本件事故現場を通過するにあたり運転者として常識外れの誤つた措置をとつたために発生したものである。すなわち、

(一)  本件事故現場は県道一宇徳善線で徳島県三好郡西祖谷山村徳善の砂利道であつて、本件道路は事故現場から奥へ三〇キロメートル位で往き止りでそこに材木の工場があり、同所からの木材搬出のための自動車道路として多く使用されているものである。とはいえ、交通は稀れで右隆幸が勤務していた谷孝運輸有限会社がほとんど専用していたと言つても過言ではない。

(二)  本件事故発生前の本件事故現場附近の道路の状態はおよそ次のとおりであつた。すなわち事故三、四日前の降雪や寒さのため凍結していた砂利道が午前一〇時頃から解けはじめて軟かくなり相当重量のトラツクが通過したわだちの跡には一回で二〇センチ位の窪みができやすくなつていた。現に隆幸がトラツクを運転して事故現場にさしかかつたさいにも長さ一メートル、深さ二〇センチメートル、幅五〇センチメートルの窪みが生じていた。

(三)  訴外隆幸は、事故発生前松材一五〇〇才をトラツクに積み助手訴外元木義輝を同乗させ三好郡三野町共立製材所まで運搬中、本件事故現場へさしかかつて前項記載の窪みを発見したので、四米位手前で停車して助手と共に下車した。そこで隆幸は右窪みのうえに長さ一メートル、直径一〇センチメートルの丸太材二本を進行方向に並べ、その上に土を少々入れ、さらに長さ一メートル余りの板一枚を敷いて補修し、元木助手の誘導によつて後輪部では自荷重共で約一〇トン重量のトラツクの通過をはかつた。ところが左前輪は無事通過したが左後輪が右丸太材の上に乗つたとき二本の丸太材が中央部で真二つに折れると共に道路が崩壊しトラツクが傾き約三〇メートル下の鉄道線路上に転落するに至つたものである。

(四)  一般に運転手は前記のような道路の窪みを発見した場合にとる措置として考えられるものは次のとおりであり、これらの方法がとられておれば本件事故は発生しなかつた。

(イ) 雪解け後の相当大きい窪みであるからその損傷の補修を池田土木出張所へ通報し、道路工手により安全通行ができるよう補修させたうえ通行する。そのために、一日や二日トラツクの通行を休む位は当然である。

(ロ) 仮に自ら補修するときには、窪みへ小石か土砂を入れて踏みしめるか、松丸太を道路の横断方向に何本も敷きその上を通過するようにするのが一応の常識である。

(ハ) 前記程度の窪みであればそのまま通過しても危険ではない。

(五)  訴外隆幸のとつた前記(三)の措置は自動車運転手として常識外れの誤つたものである。すなわち、車輪の輪幅(四五センチメートル)より細い丸太材(二本並べて二〇センチメートル)に一〇トン余りの力が集中的に加わりその荷重に耐え得ず丸太材が折れ、その衝撃と制動が同時に折れた丸太の上に加わり、これがさらに道路の擁壁をなす石積の内側から外側に向つて押し出す力となつて作用し、石積が決壊し道路が崩壊するに至るのである。(因みに、空石積は外側から内側へ押す力には強いが、内側から外側に向つて力が作用すると弱い性質を有する。

しかるに訴外隆幸は、右雪解け後の道路状態を全く無視して不完全な補修をし約一〇トンの重い大型トラツクを通行させようとしたものであり、本件事故は右隆幸の誤つた措置によつて惹起されたものである。

四、仮りに道路の設置又は管理に瑕疵があり被告に責任ありとするも損害の額を争う。

(一)  訴外隆幸の貨物自動車運転手として稼働できる限界は四五才までであつて六三才まで運転手として働けるものではない。この点からみて、原告らの請求する隆幸の逸失利益の損害額は不当である。

(二)  弁護士費用は被告に不当抗争が認められない本件では請求権がない。

不法行為に基づく損害賠償請求に要した弁護士費用はその全ての場合に賠償を求め得るものではなく、加害者の抗争が正当な防禦権の行使を超えて違法性を帯びる場合に限り賠償を求め得べきである。

本件事故は刑事処分の対象となるべき一般の交通事故と異なり道路の設置管理に瑕疵ありとして請求しておるものであり、道路の瑕疵は外見的に覚知し難いものであつて、法律上の帰責事由の存在も必ずしも明日ではないから、被告が応訴しその責任の所在等につき裁判所の確定判決を求める態度に出ていることは違法性ある不当の抗争行為ではない。したがつて、本件について、弁護士費用の請求は許されない(高松高裁昭和四三年一〇月一日判決参照)。

第四、被告徳島県の抗弁

本件事故は、訴外隆幸の自動車運転手としての重大な過失に起因するものであるから過失相殺を主張する。

すなわち、訴外隆幸は本件事故の前日も当日朝も本件事故現場をトラックで通過しており前記三、(二)の如き道路に損傷(窪み)のあることを知つており、しかも、雪解け後でありかつ路面が凍りその解けた後の路面が湿潤状態にあることも判つていたのに、その補修を池田土木事務所へ通報せず、前記三、(三)、(五)記載のような不完全の補修をしたまま約一〇トンの重量の大型トラックを通過せしめた点に重大な過失がある。

第五、過失相殺の抗弁に対する原告の答弁および反ぱく

一、被告の過失相殺の主張はすべて争う。

二、およそ、貨物自動車の通行が認められている県道において深さ二〇センチメートル程度の窪みが生じた場合に、これを松丸太や土砂で埋めて通過した位で道路が崩壊するということは何人も考えられないことであり、道路に瑕疵さえなければ崩壊などあり得ない。

三、被告は道路に本件のような窪みを発見した場合これを池田土木出張所へ通報すべきであるというが、本件道路のように窪みができると運転手が自ら、あるいは助け合つて修理して通過するようなことが通例となつていたのであつて(そのためほとんどの車がショベルとかジヨレンとか補修工具を積んでいた)、逐一土木出張所へ通報し修理を待つというような態勢にはなつてなかつた。

四、訴外隆幸のとつた補修措置が誤つたものと断定するのは無理である。

道路にできた窪みに木材や石を埋めその上に土や松板をおいてトラックが通行した場合にその荷重が路面やその補強材にどのようにおよぶかは難しい問題で(イ)自動車が右窪みを通るさいの傾斜、各車輪にかかる荷重の割合、(ロ)窪みに入れた木や石の形状、強度、(ハ)車輪の通る位置、(ニ)路面下の土石の組成状態、硬軟、水分によるしめり具合、(ホ)木片の路面下へのめり込み、折損の状態、(ヘ)石積みの状態など一切のデータを十分検討したうえでないと結論を出せるものではない。ただ原告は丸太材を道路を横断方向に窪みのうえにならべるとよいと主張するが、その場合でも丸太材が折損することを考えるならば縦に置いた場合と大同小異の結果になると思われる。また、軟弱な窪みに木片、石土などを入れて平にし、その上を車輪が通過した場合その荷重の主力が下方に垂直に作用することは常識上明らかである。

第六、証拠〔略〕

理由

一、次の事実は当事者間に争いがない。

原告ツルヱの夫であり、原告健二、同洋子の父である訴外片岡隆幸(大正一〇年六月二日生)は、昭和四〇年一月一三日午後四時三分ごろ、大型貨物自動車(徳一い一七―〇一)を運転して徳島県三好郡西祖谷山村字徳善の県道一宇徳善線国鉄土讃線大歩危駅南方約七〇メートル先を南から北へ向つて通過中、右道路が崩壊し自動車もろとも約三〇メートル下の土讃線線路上に転落し、脳挫傷等の重傷を負い、同月一七日午前二時三〇分同県三好郡山城町未負七六五番地の三、久次米病院において右傷害により死亡するという事故があつたこと。

右道路が被告徳島県管理にかかる公の営造物(県道)であること。

二、原告らは本件事故は突然道路が崩壊したために生じたものであり、右崩壊は右道路の瑕疵に基くものであると主張し、被告徳島県はこれを争つているので、まづ、本件事故が道路の瑕疵に起因して発生したものであるかどうかについて判断する。

(一)  〔証拠略〕を綜合すれば、次の事実が認められる。

1  本件道路は別紙現場見取図のとおり徳島県三好郡西祖谷山村徳善から同県同郡一宇村に通ずる全長一四キロメートルの未舗装(砂利道)の道路であり、本件事故当時には徳善側から二キロメートル、一宇村側から五〇〇メートルが幅員三・六メートルに拡張され大型貨物自動車の利用に供用されていたが旧来の道路はほとんどそのままの状況で改良されないで使用に供されていたこと、またその他の部分は旧くからの林道で一部拡張工事中であつた。

2  本件道路が建設されたのは早くても昭和より以前であつたが最近では木材搬出や本件道路幅員拡張工事建設資材運搬のため道路開設当時には予想もしなかつた大小のトラックが頻繁に往来するようになつていたこと。

3  本件事故現場付近の本件道路は南から北(大歩危駅方面)へ約二・五度のなだらかな下り勾配をなし、道路の東側は山であるが道路沿いには広いところで幅九〇センチメートルにわたり砂が置かれていた、道路の西側は極めて急勾配の斜面(崖)で路肩には高さ約二メートルの空石積による石垣が構築されていたが、右石垣は石を並べて、その奥にくり石をつめるという簡易な工法であつて、練石積工法による石垣に比べるとその強度は構造上比較的脆弱であつたこと。

4  本件事故現場を含む西祖谷山地方には、事故の三・四日前に雪があつたことや連日の寒気で道路が凍りそれが日中には気温上昇にともなつて雪がとけ、雪解道となつて自動車の通過したあとのわだちによつて凸凹ができやすい軟弱な状態になつていたこと。

5  本件事故現場付近の道路には重量制限や危険標識などの標識が全くなされていなかつたこと、もつとも、本件道路から国道三二号線への出口に当たる歩危観橋のたもとには昭和三八年七月ごろ徳島県が六屯の重量制限をなし、その標識として木札が立てられていたことがあるが、何ものかによつて九屯と改ざんされたままになつていたこと

6  訴外隆幸は、本件事故当日訴外谷孝運輸有限会社が訴外佐藤製材所から依頼をうけた松材原本九七本約一、二〇二才(四屯半ないし五屯)を西祖谷山村字西岡の共立製材企業組合松材集積工場で積込み助手の訴外元木義輝(当時三八才)を同乗させ本件事故現場付近まで時速一〇キロメートル位の速度でさしかかつたところ、道路西側(路肩)から七~八〇センチメートル内側のところにわだちによる窪み(深さ二〇センチメートル、長さ八〇センチメートル、幅五〇センチメートル)があつたのでその手前で停車しこれを補修するため元木に手伝わせて、松丸太(長さ一メートル、末口約九センチメートル、もつとも甲第一二号証の一では一三センチメートルであつたとの記載があり、元木証人は五センチメートル位ともいうが事故後現物によつて確認したさいに記載された甲第一二号証の一の信用度が高いのでこれを採用する)二本を道路に並行して右窪みにあてがつたうえ、土砂をかき込み、さらに幅三〇センチメートル厚さ約二・五センチメートルの松板を置いて一応補修を終り、元木に誘導させながら箇所を通過しようとしたところ、前輪が無事通過し左後輪が右補修箇所にさしかかつたところ左後車輪が右窪みにめりこみ、自動車は左後方に傾き、ほとんど同時に道路が石垣とともに崩壊し、自動車は一回転して約三〇メートル下の土讃線路上に転落するに至つたこと。

7  一般に軟弱な路面の窪みに丸太や岩石など路面より固い物体を入れた場合には摩擦係数が小さくなつて、楔を打ち込んだと同様の力が加わり、崩れやすくなること、これに反し土砂や小石を右窪みに埋め込んだ場合には摩擦係数が大きく、力(重量)が分散して加えられるためめりこみがいくらか少なくなること。

8  本件事故現場における道路崩壊の状況は、別紙図面平面図および断面図のとおり、道路西側の石垣部分での長さ五・六五メートル、高さ一・二メートルないし二メートル、幅は道路幅員の三分の一約一・三メートルにおよんでいたこと。

以上の事実を認めることができ、前掲各証拠中右認定に反する部分はその余の部分と対比して措信できず他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二)  ところで、被告徳島県は本件道路の崩壊は訴外隆幸の補修方法が常識はずれの誤つたものであつたことに起因すると主張するので、まずこの点を判断する。

訴外隆幸のとつた補修方法は(一)6に記載したとおりであるが、前認定のような本件道路の状況、崩壊の範囲、石垣の構築状況に照すと、右訴外人が本件事故直前にとつた右措置をもつて一概に誤つた方法であると断定できないし仮りに、被告主張のような方法で補修をしたとしても、本件道路の崩壊は避けることができなかつたと認められるから道路の瑕疵に基くものということができる。すなわち、

1  楠本証言によつて一応科学的合理性が推認される前記(一)7後段記載の方法をとつて本件事故現場を通過した場合でも、軟弱化した道路と老朽化した石積という状況下において重量約九・五屯ないし一〇屯のトラックが通行した場合本件崩壊を避止できたとは断定できないこと。

2  右楠本証言は、本件道路の路面ないし路面下を実地調査したうえでなされたものでないから、一般論としては通つても、訴外隆幸のとつた措置が原因で本件崩壊が生じたものと断定するには客観的データの正確性に欠ける点のあることを否定し得ないこと。

3  〔証拠略〕によると、訴外隆幸のとつた措置が悪かつたために生じたものでないかといつているが丸太の上に垂直以外(車輪が丸太からはずれた場合)に荷重が加えられたか、垂直に加えられたかの前提事実を確定しないで出された推測であるからこのままでは採用できないこと。

以上のとおりであるから訴外隆幸のとつた道路補修措置以外にもつと適切な方法や、他の方法も考えられたことは認められるが、同訴外人のとつた措置を全く非常識でありかつ、誤つたものであると断定できるだけの資料はない。かえつて、数日前からの雪解けや凍結していた道路が日中、温度の上昇にともなつてぬかるみとなり、その水分が路面に浸透して、飽和状態となり路面下が極めて軟弱になつていたところ、約一〇屯近い重量の貨物自動車が通過したことと、空石積の石垣にみられる構造上の弱さとによつて、その荷重に耐えることができなくなり、ついにこれが崩壊するに至つたものと推認するのが相当であり、本件道路の崩壊は右道路の瑕疵に起因して発生したものといわざるを得ない。

(三)  そこで、右道路の瑕疵が被告の本件道路設置又は管理の瑕疵に基づくものであるかどうかを検討する。

1  本件道路の設置は極めて古く、現在のように交通量が増え、車輌が大型化し、積載量が増加する以前につくられたものであつて、空石積による石垣も設置当時に設計の不備や材料そのものの悪さなど見られなかつたと推認できる。したがつて、道路の設置自体に瑕疵があつたということはできない。

2  しかしながら、道路設置について瑕疵がなく、設置当時には十分その役割を果していたとしても、道路利用状況の変化にともないこれに応えうるだけの道路として十分な安全性を具備していなければならないところ、前認定のように路面が軟弱化し、そのうえ空石積による旧石垣のままであつたため(本件は冬期(一月)における特殊性もあるが、このことは降雨期でも同様である)、これが重なつて道路としての安全性を欠くに至つていた。しかるに、道路管理者たる被告徳島県は本部道路につき十分な改良、補修工事をなさず、かつ、重量制限や危険標識を施すなど危険防止の措置(道路法四二条、四五条、四六条によつて要請される相当の設備)を講じていなかつたものであるから、本件道路の管理に瑕疵があつたものということができる。

被告徳島県はこの点について、道路管理の瑕疵とは道路の損傷を管理者が知りながら放置していた場合を指すものといういわゆる主観説を主張するけれども、前記のように客観的に安全性が欠如した状態が道路管理上のものである以上管理義務違背の有無を問う必要はない(すなわち客観説による)と解するのが相当である。

なるほど、〔証拠略〕によると、被告徳島県の下部機関である池田土木出張所係員による道路管理が財政上、人員上許される範囲のぎりぎりのところで精一杯行われていたことを認めることはやぶさかでない。すなわち、徳島県下の山村部の県道はそのほとんどが未だ空石積工法によるものであること、これを練石積工法の石垣に築造しなおすことは莫大な予算を必要とすること、本件道路を直接管理する池田土木出張所に対し割当てられた昭和三九年度の予算、危険箇所整備費は約一九六万円であるところ、担当道路は約二九五キロメートルもあり、その内、危険箇所は四六〇箇所にのぼるから、到底全面的に補修は実施できず、その内通行止めになつた個所の補修をしただけで食われてしまい、あとは、道路を利用する運転手の自主的な協力によつて通行の都度危険個所を修理していたにすぎなかつたこと、本件事故現場付近は、昭和三九年一二月九日ごろ補修がなされたが、その場しのぎ程度のものであつたこと、また、右土本出張所では道路工手一人の分担区域は平均一〇キロメートルであり、一日の作業量は約三〇〇メートルが限界であつたこと、本件事故現場付近も一月七日から事故発生までの間に一、二回パトロールがなされていること、以上の事実が認められ、その道路管理者が財政予算上の理由を表面に出してこれを放置することは許されない。また道路を管理する現場係員が連日分担区域をパトロールしても、なお本件のような事故を避けることができなかつたということも前記道路の瑕疵を放置する理由にならないことは言をまたずして明らかである。

三、過失相殺について

被告徳島県は本件事故は訴外隆幸の自動車運転上の重大な過失によるものであるとして、過失相殺を主張するので検討する。

前判示認定事実のほか、〔証拠略〕によると、訴外隆幸は本件道路の状況については事故前から十分認識していたこと、事故前日には松材を積載して事故現場を通過し、また、事故当日も本件事故現場を通つて西祖谷山村字西岡の松材集積場へ行つたこと、そのさい訴外隆幸はトラックの車輪が路面の窪みにかかりかぶりがひどかつたので助手の元木と帰途は土をかぶせるなど応急措置をする必要のあることを話し合つていたことが認められるが前判示のように訴外隆幸のとつた措置が万全のものでなかつたとしても、一般の自動車運転手にとつて事故当時予想された危険(積荷の傾きによる転覆)防止の措置としては十分なものというべきであつて、この点に過失はない。この点、楠本証言や河野証言にみられるような措置すなわち、直径二二センチメートル位の丸太を七本以上ワイヤーで縛つて道路を横断する方向に並べると一層完全であつたかも知れないが、これを自動車運転手の一般的な注意義務に属するとみるのはいささか酷に過ぎる。

また、本件事故現場の道路路肩寄りにはまだ五〇センチメートル以上の道路部分があつたから、強引な運転手ならば左側車輪を右路肩近くまではみ出して通行したかも知れないのに訴外隆幸は前判示のように慎重な運転をしたのであるから、かえつてこれは讃えられるべき行動であつた。したがつて結果的には証人城尾雅由の証言にみられるように他に色々な補修方法や通行方法も考えられること事実であるが、果して当時本件道路のような山間部の砂利道を往来する自動車の運転手の中に訴外隆幸のとつた措置をとるものさえ、そうざらにはいなかつたのではないかと思われる。河野証言や城尾証言の一部に見られるように当時、本件道路の窪み程度なら何ら補修もしないで一気に通過するような運転手が多かつたのではないか。いずれにしても、訴外隆幸のとつた措置は結果的に、あるいは、物理工学的な専門的見地からは、必ずしも適切なものといえない点があつたかも知れないが、自動車運転者として責められるべき点は全く見当らない。また土木出張所へ通報もしないで応急補修をしたことも河野証言によると、本件道路の窪み(オツポレ)程度のもので道路が崩壊すると考えられず、緊急補修の対象にも入らないから、運転者など道路利用者の自主的補修の協力を期待していたというのであり、本件の場合訴外隆幸が通報をしないで自ら補修したこと自体は何ら責めるべき点がない。

最後に、本件道路に重量制限がなかつたことは前判示のとおりである。たゞ本件道路は徳善側で吉野川にかかる歩危観橋を至て国道三二号線に通じているところ、当時同橋上では六屯の重量制限があつたことは前示のとおりであるから、訴外隆幸が自重四屯半、積載量六屯のトラックでやや控え目に四屯半ないし五屯の松材を積んでいたとはいえ、同橋上に至れば重量制限に違反することになるが、これは橋の構造上から規制せられたものと思料されるから右重量で本件道路を通行したことは何ら違法にならない。以上、いずれの点からみても、訴外隆幸に自動車運転上の過失があつたことを認めるに足りない。

四、よつて、原告らの被つた損害について判断する。

(一)  訴外隆幸死亡による損害と原告らの承継

1  得べかりし利益の喪失

〔証拠略〕を綜合すれば、亡隆幸は本件事故による死亡当時満四三才の健康な男子で訴外谷孝運輸有限会社の貨物自動車運転手として月額平均三二、〇〇〇円(昭和三九年一〇月から一二月分まで三か月間の平均)の給与と年間賞与六二、〇〇〇円(夏と冬の二回)一か月平均五、一六六円合計一か月平均三七、五三二円の収入を得ていたこと、第一二回生命表によると平均余命年数が二九・〇五年であること、本件事故なかりせば貨物自動車運転手として少なくとも六〇才まで一七年間は稼働でき、また六一才から六三才までは貨物自動車運転手としては肉体的に無理があるとしても、近時の稼働年令の伸びを考慮に入れると、同じ会社で事務職に転じるか、個人タクシーの運転手として稼働でき、その間、前記月額平均収入を得ることができるものと推定でき、この点に関する原告らの主張は結局正当である。

そして、同人が右収入を得るために必要な生活費は、同人の家族が同人の前記月収の全額を生活費に充てていたことが

〔証拠略〕により認められるので、これを消費単位指数を使つて推計すると次のとおり一か月間の生活費は一三、九〇一円となる(消費単位指数ならびに算出方法は日本経済新聞社発行「人身事故の賠償計算」佐藤信吉著七八頁以下参照)。すなわち、

家族全体の年間生活費総額=450,404円(37.532×12)

本人と家族の消費単位指数合計=1+0.9+0.4+0.4+27

本人の1年間の生活費=450,404×1/27=166,816円(円未満切捨)

本人の1か月間の生活費=166,816÷12=13,901円(円未満切捨)

そこでこれを前記月額平均収人から控除した二三、六三一円(年間純収入は二八三、五七二円となる)に残存稼働可能年数二〇年を乗じ、年五分の割合による中間利息の控除をホフマン式年別計算法(単利年金現価率は一三・六)によるとして訴外隆幸が死亡したことにより喪失した得べかりし利益の現在価格を算定すると、次のとおり、三、八五六、四七九円となる。

23,631円×12×13.6=3,856,479円

2  訴外隆幸の慰謝料

隆幸が極めて頑健な身体の持主で真面目な労働者であつたこと、最愛の妻と、また小学生の幼ない子供二人を有しながら本件事故により不慮の死に遭遇したことなど諸般の事情を考え合わせると、同人の精神的苦痛は察するに余りがある。これに対する慰謝の額は一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

3  原告らの承継

〔証拠略〕によると、訴外亡隆幸の相続関係は次のとおりである。

原告 ツルヱ 原告 健二

原告 洋子

亡 隆幸

訴外 妙子

亡妻 弥生(昭和二九年五月七日死亡) 訴外 美也子

訴外 登志彦

その法定相続分は原告ツルヱ、三分の一、原告健二、同洋子、各一五分の二であり、同割合によつて前各項の隆幸の損害賠償請求権を相続により承継取得した。その額は

原告ツルヱ 1 一、二八五、四九三円

2 三三三、〇〇〇円

原告健二 1 五一四、一九七円

原告洋子}2 一三三、三三二円

である。

(二)  原告ら固有の慰謝料

〔証拠略〕を綜合すると、隆幸が死亡したことによつて一家の支柱を失つた原告ら妻子の受けた精神的苦痛は極めて深く、一時は徳島県のあつせんで母子寮に入つたが間もなく子供の病気を気にして退寮したこと、原告健二は幼な心に母ツルエの苦労を思つてか自ら淋しさに堪えられなかつたのかその口で親子心中を言い出したことさえあるというのであつてその悲哀は察するに余りがあるところである。よつて、その慰謝の額は

原告ツルヱに対し 七〇〇、〇〇〇円

原告健二

原告洋子}に対し 各二六〇、〇〇〇円

が相当である。

(三)  弁護士費用

被告はこの点について、弁護士費用は加害者の抗争が正当な防禦権の行使の範囲を超えて違法性を帯びる場合に限り損害と認められるべきであると抗争するので判断する。

たしかに、被告主張のように国賠法二条によつて国又は地方公共団体が負担すべき責任は、それが故意又は過失を要件とするのか、客観的に瑕疵が存在する以上設置者、管理者が右事実を知つていたかどうかを問わないとするものなのかその性格が必ずしも明白でない点もあるから、被告が原告らの賠償請求に対し、これを任意に履行せず、原告らをして提訴を余儀なくさせたことをもつて不当違法な抗争と断ずることができないのはいうまでもない(不当抗争というためには、右道路の瑕疵が故意に基くような場合に限られることとなる)。しかしながら、一般に不法行為による被害者が加害者において任意に賠償に応じないため、やむを得ず訴訟を提起するため、弁護士に依頼し相当の報酬を支払うのは当該不法行為から通常生ずべき損害といえるのであつて、加害者の不当抗争が認められないときでも、右弁護士費用は事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情をしんしやくして相当と認められる範囲内のものに限り相当因果関係に立つ損害というべきである(裁判昭和四四年二月二七日一小、集二三巻二号四四一頁参照)本件においてこれをみるに、道路瑕疵に基く賠償責任の性格は(主観説に立つか客観説をとるか)暫くおき、前判示のように本件道路管理の瑕疵は被告徳島県は本件道路の管理者として道路法四二条、四五条、四六条に規定せられた危険防止義務を怠つた過失によるものであり、原告らが右道路瑕疵に基づく訴外隆幸の死亡事故の賠償を相手方から容易に受け得ないためその権利の擁護を実現するのに弁護士に委任したことは今日では何ら特異なことではない。

〔証拠略〕によれば、原告らは本件訴訟委任の報酬金として、原告ら訴訟代理人原秀雄弁護士との間に同弁護士の所属する徳島弁護士会の定める基準に従つて、判決認容額の二割を支払うと契約していることが認められ反証はない。ところで原告らが右報酬契約に基づき同弁護士に対して支払うべき報酬金の内後記請求認容額の約一割五分に相当する金額、原告健二、同洋子については各一〇〇、〇〇〇円、原告ツルヱについては二〇〇、〇〇〇円は被告徳島県の道路瑕疵により原告らに与えた通常生ずべき損害ということができる。そうすると、被告は原告らに対し右各金額の弁護士費用を賠償する義務がある。

(四)  原告ツルヱの損害につき労災保険給付金の充当

原告ツルヱは労災保険給付金を全損害に充当するけれども、労災保険金は遺族に対する生計維持のために支給されるものであつて、精神的苦痛に対する慰謝料まで補償の目的とするものではないから、原告ツルヱが承継した隆幸の財産的損害について充当すべきである

原告ツルヱが訴外隆幸の本件事故による死亡によつて、労災保険金一、一一〇、〇〇〇円をすでに受給していることは原告ツルヱが自認するところであり、右の内五六、〇〇〇円を隆幸の葬儀費用等に充てたことは原告ツルヱ本人尋問の結果および弁論の全趣旨により認められるから、これを控除した一、〇五四、〇〇〇円を原告ツルヱの前記隆幸の消極的損害承継分一、二八五、四九三円に充当することとする。

五、以上のとおりであるから、被告は道路の管理者として、原告健二、同洋子に対し各金八〇七、五二九円と内金七〇七、五二九円については隆幸死亡の日(不法行為の日)の翌日である昭和四〇年一月一八日、内金一〇〇、〇〇〇円については判決言渡の日の翌日である昭和四六年三月四日から、原告ツルヱに対し金一、四六四、四九三円と内金一、二六四、四九三円については昭和四〇年一月一八日、内金二〇〇、〇〇〇円については昭和四六年三月四日(遅延損害金起算日は原告健二らと同一)から、各支払いずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。原告らの請求中右認容を超える部分はいずれも相当でない。

六、よつて、原告らの本件請求は一部理由があるから認容し、その余は棄却し民訴法八九条、九二条、一六九条を適用し被告の仮執行免脱の宣言の申立は理由がないのでこれを却下することにして、主文のとおり判決する。

(裁判官 葛原忠知)

断面

〈省略〉

現場見取図

〈省略〉

決定

原告 片岡健二

外二名

被告 徳島県

右当事者間の昭和四二年(ワ)第三四七号損害賠償請求事件について、原告からの申立により判決中、明白な違算を発見したるにより、次の通り更正する。

主文

本件について昭和四六年三月三日言渡した判決につき

主文1中「金八〇七、五二九円」とあるは「金一、〇〇七、五二九円」「金七〇七、五二九円」とあるは「金九〇七、五二九円」

理由五中「金八〇七、五二九円と内金七〇七、五二九円」とあるは「金一、〇〇七、五二九円と内金九〇七、五二九円」

と更正する。

昭和四六年三月九日

徳島地方裁判所

裁判官 葛原忠知

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